
『Youthful Days』。
タイトルだけ見ると、完全に青春ソングです。
疾走感のあるメロディ。
ドラマ主題歌っぽい多幸感。
カラオケでも人気。
実際、「爽やかなラブソング」というイメージを持っている人、多いと思います。
……僕もそうでした。
20年前、意中の女性の前でこの曲を気持ちよく熱唱するまでは。
後から歌詞をちゃんと読んで、少し青ざめました。
「あ、これ。
思ってたより、だいぶ生々しい曲だ。」
でももっと怖いのは、その先なんです。
この曲、本当に歌っているのは恋愛ですらないのかもしれない。
水たまりに飛び込む二人
にわか雨が通り過ぎてった午後に
水溜まりは空を映し出している
二つの車輪で僕らそれに飛び込んだ
好きな始まりです。
雨上がり。
自転車。
水たまり。
映像として完璧に青春。
でも、ここで大事なのは風景じゃない。
「飛び込んだ」こと。
大人って、水たまりを避けるんですよね。
靴が汚れる。
ズボンが濡れる。
周りの目もある。
自然と計算が働く。
でもこの二人は、飛び込む。
濡れるとか、後のこととか、そんなものを一瞬忘れている。
この「計算を捨てる衝動」が、この曲の重要なキーワードだと思っています。
サボテンの赤い花——急に空気が変わる
そして2番。
ここで急に、曲の温度が変わります。
サボテンが赤い花を付けたよと言って
急いでおいでって僕に催促をする
サボテン。
赤い花。
催促。
そして、
何回も繰り返し 僕ら乾杯をしたんだ
……妙に意味深です。
ファンの間では昔から、この場面を性行為の暗喩として読む人が少なくありません。
そう考えると、
「壊れるほどの抱擁」
「あらわに心をさらして」
みたいなフレーズも、急に輪郭が変わってくる。
爽やかな青春ソングだと思っていた曲が、突然、肌の温度を持ちはじめる。
僕がカラオケ後に軽く後悔した理由も、たぶんそこです。
でも、ここで終わらない。
桜井和寿は、「ちょっとエッチなラブソング」を書いて満足する人じゃない。
この曲には、さらにもう一段深いテーマがあります。
「剥き出しの自分を感じる」という核心
答えは、コーラスのこの一行です。
日常が押し殺してきた
剥き出しの自分を感じる
ここ。
ここが全部の核心だと思っています。
僕たちは毎日、かなり頑張って「ちゃんとした人間」を演じています。
空気を読む。
言葉を選ぶ。
本音を飲み込む。
欲望も、怒りも、弱さも、だいたい社会生活の中で丸め込んで生きている。
でも。
この人と一緒にいる瞬間だけは、それが外れる。
理性より先に体が動く。
説明より先に衝動が来る。
だからこの曲には、妙な解放感がある。
恋愛の歌に聴こえるのに、どこか「生き物の歌」みたいな匂いがする。
水たまりとサボテンは、同じものを歌っている
ここで最初の水たまりに戻ります。
一見、関係なさそうな
「雨上がりの自転車」と
「サボテンの赤い花」。
でも実は、同じテーマを描いているように思えるんです。
どちらも、
計算を忘れてしまう瞬間。
水たまりに飛び込む衝動。
誰かを求めて、剥き出しになる衝動。
それは全部、日常が押し殺していた自分が顔を出す瞬間なんですよね。
そう考えると、『Youthful Days』の“Youthful”って、単なる若さの話じゃなくなる。
年齢のことじゃない。
計算より先に、世界へ飛び込める力。
大人になる過程で失ってしまったもの。
そして、この人といる時だけ、それを一瞬取り戻せる。
だから最後の、
"I got back youthful days."
が効く。
「若かった頃を思い出した」じゃない。
「失っていた自分を、少しだけ取り戻した。」
そんな響きに聞こえてきます。
さいごに
爽やか。
生々しい。
哲学的。
普通なら、あまり同居しない三つです。
でも『Youthful Days』は、それを全部やってしまう。
表面だけ聴けば、気持ちのいい青春ソング。
少し潜ると、かなり肉体的なラブソング。
そして最後には、
「社会生活の中で押し殺してきた、自分の本能や衝動をどう取り戻すか」
という話になっている。
……恐ろしい曲です。
何気なく口ずさんでいたのに。
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