Mr.Children歌詞解釈記

ミスチルファン歴30年。

【日常肯定ソング】Mr.Children『Sign』歌詞の意味と解釈 〜何も起きない愛の歌〜

Mr.Children『Sign』。

「オレンジデイズ」の主題歌として大ヒットした曲なんですけど、派手な盛り上がりがあるわけでも、強いメッセージがあるわけでもない。

なのに、じわじわ染みてくる。

「何も起きない愛の歌」だと、ずっと思ってました。

でも今回、タイトルの「サイン」を歌詞で追っていったら、一つだけ、静かに動いているものがあったんです。

全部、音楽の言葉でできている

届いてくれるといいな 君の分かんないところで
僕も今奏でてるよ
育たないで萎れてた新芽みたいな音符(おもい)を
二つ重ねて鳴らすハーモニー

歌い出しが「届いてくれるといいな」。

「届けたい」でも「届ける」でもない、諦めにも似た願望系。

相手が気づかないところで、見返りも求めずに、奏でている。

そして「音符」と書いて「おもい」と読ませる。

育たずに萎れてた、二人それぞれの想い。それを重ねて、ハーモニーにする。

この曲、最初から最後まで、音楽の言葉で愛を語ってるんですよね。

奏でる、ハーモニー、そして——サイン。

サインって、信号であると同時に、音の合図でもある。

積み木みたいに、乗せてゆく

「ありがとう」と「ごめんね」を繰り返して僕ら
人恋しさを積み木みたいに乗せてゆく

積み木なんですよね。

ちょっと油断すると、ガシャンと崩れる。

「愛してる」なんて大きな言葉より、この不安定な積み木をひとつずつ乗せ続ける行為に、愛が宿ってる気がします。

「もう」の後悔

君が見せる仕草 僕に向けられてるサイン
もう 何ひとつ見落とさない

ここで、1回目の「サイン」が出ます。

君が見せる仕草は、僕に向けられたサインだ、と。

そしてそれを「もう、何ひとつ見落とさない」。

この「もう」が、ずっと気になってるんですよ。

昔はさんざん見落としてきた、という後悔の匂いがする。

わかってたのに、気づかなかったふりをしてきた日々。その反省の上に立ってる「もう」なんです。

——で、この時点では、サインは「君から、僕へ」。

僕は、受け取る側です。これ、覚えておいてください。

サインが、世界に広がる

めぐり逢った すべてのものから
送られるサイン もう
何ひとつ見逃さない

2回目のサイン。ここで、視界が一気に広がるんです。

さっきは「君が見せるサイン」だった。

でも今度は、「すべてのものから送られるサイン」。

君だけじゃない。

めぐり逢ったすべてが、サインを送ってくる。

木漏れ日も、時間も、ありふれた朝も。世界が、サインだらけになる。

そして「見落とさない」が、「見さない」に変わってる。

落とす、から、逃す、へ。

受け身で取りこぼさないように、から、能動的に捕まえにいく感じに。

君一人を見てた目が、世界全体に開いていく。

そして、サインが僕を強くする

君が見せる仕草 僕を強くさせるサイン
もう 何ひとつ見落とさない
そうやって暮らしてゆこう

最後、3回目のサイン。

ここが、この曲のいちばん大事なところだと思います。

1回目は「僕に向けられてるサイン」でした。

ただ、向けられてた。受け取るだけだった。

でも最後は、「僕を強くさせるサイン」になってる。

同じ「君が見せる仕草」なのに、意味が変わってるんですよ。

最初はただ受信していたサインが、最後には、僕を強くする力になっている。

つまりこの曲、「何も起きない日常」に見えて、受け取る側の僕が、静かに変化してたんですよね。

君のサインを見落とさないようにしていた人が、世界中のサインに気づくようになって、そのサインで強くなっていく。

日常は、何も変わらない。

変わったのは、それを受け取る僕のほうだった。

タイトルが「Sign」なのは、たぶん、これなんです。

サインは、君から僕への信号で、世界からの合図で、そして最後に、僕を生かす力になる。

さいごに

身体でも心でもなく愛している

そうやって暮らしてゆこう

何を愛してるのか。

身体でも、心でもない。たぶん、その人が生きてきた時間そのもの。

変な寝癖とか、笑う時の目の形とか、コーヒーの好みとか。

そういう、サインみたいな小さなものの集積を、愛している。

そして曲は、「愛し合おう」でも「生きていこう」でもなく、「暮らしてゆこう」で終わる。

劇的なことは、何も起きない。

ただ、暮らしていく。

でもその暮らしの中には、無数のサインがあって、それを見落とさない人だけが、強くなっていける。

「何も起きない愛の歌」だと思ってました。

でも、何も起きない毎日を、サインだらけの世界として受け取れるかどうか。

たぶん、そこに全部かかってる。

それはもう、立派に、何かが起きている歌なんですよね。