
「Again」は、不思議な曲です。
聴き終わると確かに救われた気持ちになる。
でも、歌詞をあらためて読み返すと、主人公はほぼずっとマイナスの言葉を口にしています。
「傷つくだけ」「すり減らすだけ」「空っぽになるだけ」。
希望の言葉ではなく、諦めの言葉ばかりが並んでいる。
なぜ、マイナスを重ねるだけの歌が、これほど感動的なのでしょう?
歌詞の意味と構造から読み解いてみます。
期待しないという生き方
期待しない方が利口です
明るくない将来はお見通し
極力深入りせぬよう
関係を保とうと努めた
何にしたって いつだって
傷つくだけ 静かに傷つくだけ
冒頭から、かなり正直です。
ここにいるのは、絶望した人間じゃない。
傷つかないように学習してしまった大人です。
若い頃は、期待することで前に進めた。
でも今は、その期待が裏切られた時のダメージを、もう知っている。
だから最初から踏み込まない。
賢くなったようで、ただ身をすくめているだけ。
ベランダのサーフボード
ベランダにサーフボードは眠ってる
ここ4、5年 ビーチは未踏の地
サーフボードは、かつて自分を熱くさせたアイデンティティの残骸。
捨てられないのは、まだ自分を諦めたくないから。
でも週末になれば疲れ果てて、ビーチに向かう気力なんて残っていない。
「いつかやる」は、もう希望じゃなくて、ただの麻酔みたいなものになってる。
「だけ」が意志に変わる瞬間
ここで注目したいのが「だけ」という言葉。
毎日を 塗り潰すだけ
がむしゃらに塗り潰すだけ
実際は 空っぽになるだけ
心が空っぽになるだけ
「だけ」という言葉がAメロからBメロに12回積み上がっていきます。
これは「諦め」のフォーマットです。
「どうせ〜だけ」という思考の癖。聴いているだけで、重たい気分と同じ場所に引き込まれていく。
でも後半、同じ「だけ」がもう一度出てきます。
それでも、やり直すだけ
「それでも」という接続詞が入った瞬間、「だけ」の意味が逆転する。
"諦めの言葉"が、"意志の言葉"になる。
同じ構造を使いながら、意味だけを変える。
これが「Again」の核心です。
「お宝」と「君」
胸の中で光ったお宝 そっとそっと 仕舞った
ここで出てくる「お宝」。
たぶん、昔の自分とか、希望とか、そういうもの。
大事なのは、それを“持っている”ことじゃなくて、「仕舞ってある」っていう状態なんだと思う。
壊したくないから。失いたくないから。
大切なものほど、人は奥の方にしまってしまう。
優しい気持ちになれた日は 君が 君が、、
そして、そのお宝を光らせるのが「君」という存在。
恋人なのか、家族なのかは分からないけど、誰かがいる日だけ、少しだけ優しくなれる。
それでも
最後、ほんの少しだけ変化が起きます。
胸の中にしまったお宝
そっとそっと 今日も優しく光った
しまってあるだけだったものが、光る。
塗り潰された毎日の上から、ほんの少しだけ色が乗るみたいに。
この色彩の変化こそが、この曲の救いです。
さいごに
この曲は、何かを取り戻す話ではないし、劇的に変わる話でもないと思います。
むしろ、何も変わらない日々の中で、それでも完全には止まっていない状態を描いてる。
かつて「HANABI」で歌った「もう一回」みたいに、
胸の奥にしまったものが消えていないってだけで、人はもう一日分くらいは、なんとか動ける。
そんな曲だと思います。
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