Mr.Children歌詞解釈記

ミスチルファン歴30年。

【ミスチル史上最も容赦ない怒り】『LOVE はじめました』歌詞解釈

「LOVE はじめました」

このタイトルを見た時、僕は思いました。

「きっとモー娘。みたいなキュートでポップな恋愛ソングかな?」

ところが、聞こえてきたのは全く違う世界だった

「だ、騙された.........!?]

でもこの「衝撃的な裏切り」こそが、桜井さんの狙いだったのかもしれません。

実際、桜井さんは街で「冷やし中華始めました」の張り紙を見て、このタイトルを思いついたそうです。

街でよく見かける文句に、今の恋愛の現実を重ねたのです。

「相変わらずだね」って
昔付き合ってた女にそう言われた

冒頭で描かれるのは「進歩のない男」へのディスりです。

怒ればいいのに、笑ってしまう。

壊れないための、防御反応。

人って、図星を突かれた時ほど、変にヘラヘラしてしまう時、確かにあります。

 

そして、この曲で一番ゾッとするのがここ。

犯人はともかく
まずはお前らが死刑になりゃいいんだ

こ、怖い...........

ミスチルの中でも、ここまで露骨な怒りって珍しい気がする。

事件を“消費”する人たちへの嫌悪。

ワイドショー感覚で騒いで、数日後には忘れていく空気への苛立ち。

でも、この曲が面白いのは、その直後なんですよね。

でも このあとニュースで中田のインタビューがあるから
それ見てから考えるとしようか

……急にサッカー。

この落差、すごい。

社会への怒りとか正義感とか、そんなものが中田英寿のインタビュー一本で上書きされる。

しかも、これを歌ってる本人も、それを否定してない。

むしろ、「自分もそういう人間なんだ」って白状してる感じがするんです。

ここ、すごく人間っぽい。

正論だけでできた人なんて、現実にはほとんどいないですからね。

 

あとそして、個人的にこの曲で一番苦しくて、一番美しいと思うのがここです。

坊主が屏風に上手に
坊主の絵を書くと言うだろう
なら僕は愛してる人に
愛してるという ひねりのない歌を歌おう

桜井さんって、本来めちゃくちゃ“うまい”人なんですよね。

比喩も天才的だし、言葉選びも異常なくらい洗練されてる。

だからこそ、この「ひねりのない歌を歌おう」が重い。

しかも続けて、

意味なんかないさ 深くもないし 韻だって踏んでない

とまで言ってしまう。

これ、単なる開き直りじゃない気がするんです。

言葉を磨けば磨くほど、本音から遠ざかっていく感覚って、たぶんある。

綺麗に説明できる頃には、“生の気持ち”だけどこか抜け落ちてる、みたいな。

なんか、料理に似てるんですよね。

手をかけすぎた結果、逆に素材の味が分からなくなる感じ。
いや、変なたとえかもしれないですけど。

でも、この曲には「うまく伝えること」より、「ちゃんと本音であること」を選んだ感じがある。

そこが異様に刺さるんです。

 

LOVE はじめました
毎度毎度のことですが
去年よりおいしくできました

ここの皮肉、ほんと好きです。

毎年同じ宣伝文句。
毎年同じ恋愛。
毎年「今度こそ」って言って、また同じ失敗をする。

人間って結局、そんなに変わらないんですよね。

でも、この曲はそこを突き放さない。

「また繰り返してるよ」と笑いながら、どこかで「それでも仕方ないよな」とも言ってる気がする。

恋愛も、人生も、多分そう。

矛盾だらけなのに、懲りずにまた始めてしまう。

あーあ、って感じです。

でも、その情けなさ込みで人間なんでしょうね。

さいごに

結局この曲って、「LOVE」という言葉そのものへの違和感を歌ってるんだと思います。

綺麗すぎる言葉。
使い古されすぎた言葉。
でも、それでも人はその言葉を捨てられない。

ただのラブソングに見えて、実際はかなり痛烈な社会風刺。

しかも、その批判の矛先をちゃんと自分にも向けてる。

そこが、Mr.Childrenの怖さであり、魅力なんだろうなと思います。