Mr.Children歌詞解釈記

ミスチルファン歴30年。

なぜミスチルは『俺のことだ』と思わせるのか。267曲の主人公を調べてわかったこと

「これ、俺のことじゃん」

Mr.Childrenを聴いていて、ふとそんなふうに思ったこと、ありませんか?

誰もが寝静まった深夜1時。

イヤホンから流れてきた一節に、

まるで自分の胸の奥を勝手に覗き込んできたような妙な感覚。

僕はあります。というか、何度もあります。

 ずっと気になってたんですよね、この"曲に乗り移る感じ"の正体が。

 で、思い切ってちゃんと向き合ってみました。

 ミスチルの全267曲。

その歌詞に出てくる「主人公」を、ひとつひとつ見ていったら、どんな性格の人たちなのか——。

ちょっと地道すぎる作業でしたが(笑)、やってみると面白いことが見えてきました。

【グラフについて】 ※各楽曲は、歌詞全体の中でいちばん強く出ている性格をひとつだけ選んで分類しています。
(本当はもっと複雑なんですけどね。あえて"主役"を決めました)

■ 1位:不器用な男(48曲)

代表曲:常套句、ウスバカゲロウ、つよがり

「やっぱりそうか!」と心の中で叫びました。

真夜中に膨らんだ幾つもの後悔を
君の残像に重ね悶えながら
寂しさに包まってる
(ウスバカゲロウ)

好きなのに、うまく言葉にできない。

夜中にひとりで、ぐるぐる考え込んでしまう。

蚊の泣くような
頼りない声で
君の名前を呼んでみた(つよがり)

結局それしかできなくて、でもそれだけは本気だった——そんな男。

でも、いいんですよねこの主人公。 諦めないんです。

 不器用なまま、それでも最後はなんとか前を向こうとする。

その感じが、妙に親近感が持てる……みたいな。

 約5曲に1曲がこのタイプ。 まさに"ミスチルの顔"みたいな主人公です。

■ 2位:もがく男(46曲)

代表曲:終わりなき旅、ランニングハイ、HANABI

世間が思い浮かべるMr.Childrenらしさは、たぶんこの主人公にあると思います。

 前向きな応援歌。
人生を進んでいく歌。

でも、よく聴くと、ただ明るいわけじゃないんですよね。

むしろ、めちゃくちゃ苦しんでいる。

難しく考え出すと
結局全てが嫌になって
そっとそっと 逃げ出したくなるけど
(終わりなき旅)

考えすぎで言葉に詰まる
自分の不器用さが嫌い
でも妙に器用に立ち振舞う
自分は それ以上に嫌い(HANABI)

「頑張れば報われるよ」と言われるほど、心が冷えていく。

そんなときに必要なのは、きれいな励ましじゃない。

「俺もボロボロだけど、まだ行くわ」 そう言ってくれる存在なんです。

■ 3位:引きずる男(42曲)

代表曲:OVER、箱庭、水上バス

終わったはずなのに、手放せない。 忘れようとするほど思い出してしまう。

顔のわりに小さな胸や
少し鼻にかかるその声も
数え上げりゃ きりがないんだよ
愛してたのに(OVER)

僕は待ってる
今日も待ってる
想い出の中に心を浸して(水上バス)

でも、これって裏を返せば「ちゃんと愛してた証拠」なんですよね。

 忘れようとするほど、思い出してしまう。

 声。
匂い。
何気ない癖。
一緒に歩いた道。
もう二度と戻らない時間。

他人から見れば、ただの未練かもしれません。 でも、当人にとっては違うんですよね。

なんというか……純朴。 ちょっと不器用で、でもまっすぐで。 そんな曲が42曲ありました。

 

ここで、少しだけ立ち止まってほしいんですが——

この上位3つ、合計で136曲。 全体の51%です。

で、これを並べて見ていると、ふと気づくんです。

これって、もしかして「一人の男の時間の流れ」なんじゃないか?って。

恋をして、うまく伝えられず
(不器用な男)
それでもどうにかしようともがいて
(もがく男)
終わっても手放せない
(引きずる男)

……あれ? ミスチルの主人公って、実はみんな同じ人なんじゃない?

バラバラのキャラじゃなくて、同じ一人の、違う瞬間。 いわば——

「ミスチル主人公・同一人物説」

もちろん完全に僕の妄想なんですけど(笑)、これが妙にしっくりくるんですよね。

いやぁ、こういうことを考え始めると止まらない。

夜中にやるやつじゃないです、本当に。

……気を取り直して、4位以降を見ていきましょう。 ここから少し、曲の空気が変わってきます。

■ 4位:気づける男(27曲)

代表曲:彩り、おはよう、黄昏と積み木

僕のした単純作業が
この世界を回り回って
まだ出会ったこともない人の
笑い声を作ってゆく
そんな些細な生き甲斐が
日常に彩りを加える(彩り)

誰も褒めないような単純作業の中に、小さな誇りを見つけたり。

賞味期限ギリギリの チーズも
入ってるはずだよ
ただそれだけの夕食
幸せすぎる食卓(おはよう)

缶ビールと、期限ギリギリのチーズだけの夕食を「幸せすぎる食卓」だと感じたり。

これ、後期の曲に多いんですよね。

30年かけて、「もがく男」が「気づける男」になっていく。

それ自体が、ひとつの物語みたいで好きです。

■ 5位:優柔不断な男(26曲)

代表曲:BLUE、UFO、渇いたkiss

どっちつかずで決められない。 一歩踏み出せないまま、時間だけが過ぎていく。

僕を信じきっているあの人を
嫌いになれもしないから
よけい 分かんなくなるんだよ(UFO)

ミスチルには、こういう優柔不断な男も多いです。

でもこれ、ただの弱さじゃないと思うんです。

傷つくのが怖い。

でもそれ以上に、誰かを傷つけるのが怖い。 そこにはたぶん優しさもある。

そう考えると、この主人公はむしろすごく繊細です。

だからこそ、妙に惹かれるんですよね。

■ 6位:献身的な男(23曲)

代表曲:抱きしめたい、HERO、365日

一番まっすぐなタイプ。 見返りなんていらなくて、ただそばにいたい。

365日の 心に綴るラブレター
情熱に身を委ねて書き連ねる(365日)

終わった恋の心の傷跡は 
僕にあずけて (抱きしめたい)

……いや、正直ちょっと眩しすぎません?(笑)

こっちはコンビニでおにぎり選ぶだけでも迷ってるのに、そんな深い愛をさらっと差し出さないでほしい。

でも、だからこそ憧れるんですよね。

「本当は、こんなふうに誰かを愛したかった」
きっと誰の中にも少しだけある理想だと思うんです。

でも、Mr.Childrenはそれだけじゃない。 眩しい愛の隣に、ひっそりと暗い海がある。

■ 7位:虚無感のある男(17曲)

代表曲:深海、HOWL、未来

生きてる理由なんてない
だけど死にたくもない(未来)

わ、わかる.........。

別に何か大事件があったわけじゃない。

でも、なんとなく空っぽ。

かといって、全部終わらせたいわけでもない。

ブラインドを開けるのも面倒な位に
ここのところ無気力だ
おぼろげに目を開くと薄暗い未来が見えるよ
真昼間、冷蔵庫を開きアルコールを胃袋へ(HOWL)

ミスチルって、明るい応援歌のイメージも強いですが、実はこういう沈んだ主人公もかなり多いです。

本当に落ちたことがある人の言葉だから、届く。

この虚無感のある男は、Mr.Childrenの深い海のような部分を支えています。

■ 8位:反骨心のある男(15曲)

代表曲:マシンガンをぶっ放せ、ニシエヒガシエ、Stupid hero

社会への怒りを抱えた主人公もいます。

犯人はともかく
まずはお前らが死刑になりゃいいんだ(LOVEはじめました)

こ...............怖い!

見えない敵にマシンガンをぶっ放せ Sister and Brother

ここでも怒りをぶちまけます。

ちょっと「怖いなぁ~」と思うかもしれません。

でもよく見ると、その奥にあるのは"愛情"なんですよね。

期待していない人は、傷つかない——怒りの裏には、まだ信じたい気持ちがある。

このあたりの曲があるから、Mr.Childrenはただの優しいバンドで終わらないのだと思います。

■ 9位:執着する男(12曲)

代表曲:虜、蜘蛛の糸

金曜日に奴に会ってきたろう?
簡単に別れ切り出せたの?
どうだったんだ
把握していたい 最低な君を(虜)

嫉妬。
執着。
疑い。
独占欲。

う~ん、できれば、自分の中にあると認めたくない感情ですね。

でも、たぶん誰の中にもあるんですよ。

表に出してないだけで。

■ 10位:自嘲する男(9曲)

代表曲:雨のち晴れ、my life、跳べ

やっときました!ミスチルの主人公で一番好きなタイプです。

「お前って暗い奴」そう言われてる
幼少の頃からさ
1DK狛江のアパートには
2羽のインコを飼う(雨のち晴れ)

腰痛と偏頭痛 抱えてる
家庭環境も良くは無い(跳べ)

ちょっぴりうぬぼれてた僕も
ついにフラれた
いい事ばっかある訳ないよ
それでこそ my life(マイライフ)

いやぁ~カッコ悪いです。

正直。 でも、この主人公には不思議な強さがあります。

自分のダメさを知っている。それでも、生きている。

笑えないことを、少しだけ笑いに変えている。

全部、リアルタイムで経験しています(笑)

だからこそ、30年以上ファンを続けていられるんだと思う。

■ さいごに

Mr.Childrenの"共感"の正体って、結局ここなんだと思います。

窓に映る哀れな自分が 
愛しくもある(innocent world)

彼らの曲に出てくる主人公は、完璧じゃない。

弱い。
迷う。
引きずる。
嫉妬する。
怒る。
逃げたくなる。
朝、仕事に行きたくない日もある。
深夜1時に、誰にも言えない孤独を抱えている。

でも、それでも生きている。 なんとか前に進もうとしている。

だから、僕らは思ってしまうんです。 「これ、俺のことだ」と。

ミスチルの主人公は、僕らを励ます前に、まず隣に座ってくれる。

この主人公たちは、きっとバラバラの誰かではなく、”僕ら自身のかけら”です。

 

最後に、最新アルバム『産声』の中で、いちばん好きなフレーズを。

いつも違和感だけがして
誰にも溶け込めなくて
そんな自分も苦じゃなくて
寧ろ居心地が良かった 170cmと36.5℃の体温で
きっと 一生 ずっと 彷徨う ――Nowhere Man

そして最後にたどり着くのが、「どこにも行けない男」なのだとしたら。

それは、絶望ではないのかもしれません。