
ミスチルのラブソングを一曲だけ選べと言われたら。
迷わず、この曲を挙げます。『Hallelujah』。
出会う前の話から始まる
君に逢う前はALONE きっと独りでした
この曲、いきなり核心を言うんですよね。
君がいなければ、自分は何者でもなかった。
霧の中を歩いていた。それが、君に会って初めて路が見えた。
ラブソングって「好きだ」から始まるものが多いけど、この曲は「君がいなかった頃の自分」から始まる。
その順番が、すでに普通じゃないんですよね。
「君を不幸にはしない」という誓い
ある時は僕の存在が 君の無限大の可能性を奪うだろう
君が僕を選んだ瞬間、別の未来を失っている。
もっと完璧な相手。もっと官能的な恋。そのすべてを、自分が奪った。
それをわかった上で、それでも、と言うんですよね。
だけどこれだけはずっと承知していてくれ 僕は君を不幸にはしない
誓いって普通、「愛してる」とか「ずっと一緒にいる」とかじゃないですか。
でもこの人は「不幸にしない」と言う。
可能性を奪うことへの罪悪感を抱えたまま、それでも隣にいると決めた人間の言葉なんですよね、これ。
だからこんなに重いんだと思うんですよ。
「奪いに行く」という宣言
愛を 夢を 奪いに行こう 捕らえに行こう
誓いから一転、宣言になる。
待たない。与えられるのを待たない。
太陽が一日中雲に覆われてたって、代わって君に光を射す
優しさじゃないんですよね、これ。
強引。
でも愛って本来そういうものかもしれないなぁと思うんですよ。
守るんじゃなくて、奪いに行く。
その能動性が、この曲を他のラブソングと決定的に違うものにしてる気がします。
消えた歌詞
デモにこんな一節がありました。
子供らの顔を狂おしく撫でる手は 人を殴る手でもあり
愛と暴力が、同じ手に宿る。
あまりにも生々しい真実だと思うんですよ。
でも完成版で、この言葉は消えた。
思うに、この曲を「誓い」にしたかったからじゃないかなぁと。
人間の醜さを持ち込めば、祈りは濁る。
だから削いだんじゃないか、と。
それは偽りじゃなくて、純粋であろうとする意志だと思うんですよね。
余談
miss youツアーで、なぜこの曲だけ弾き語りだったのか。ずっと考えてたんですよね。
アルバム『miss you』は、不在の話なんですよ。いない君。空白。埋まらない孤独。
その中で桜井さんは、バンドも装飾も捨てて、一人で歌った。
壮大なアレンジがなくても、誓いは成立するのか。そう自分に問いかけるように歌ってたんじゃないかなぁと。
あの弾き語りは、確認だったんじゃないかと思うんですよね、自分自身への。