
正直、この曲かなり困りました。
歌詞が少なすぎる。
断片しかないんです。
「コーヒー」
「拭き取る」
「眠れてる?」
それくらい。
なのに、妙に残る。
アルバム聴き終わったあとも、ふとした瞬間にこの曲だけ戻ってくるんですよね。
まるで、消えかけたLINEの通知みたいに。
小さいのに、やたら気になる。
たぶんこの曲、“説明しない”ことで成立してる。
だからこそ怖い。
明け方に「エチュード」を弾く人
明け方
エチュード弾きたくなって
幾度もレミレドで躓いて
まず、この時点でもう眠れてないんですよね。
しかも弾くのが“エチュード”。
ショパンみたいな華やかな演奏会用の曲じゃなく、反復練習のための曲。
つまり、かなり孤独な時間です。
明け方に一人で、眠れなくて、同じフレーズを繰り返してる。
しかも、
「レミレドで躓いて」
っていう地味さが妙にリアル。
別に超絶技巧じゃないんですよ。
たぶん普段なら普通に弾ける。
でも、心ここにあらずだから弾けない。
失恋したあとって、こういう“小さい不具合”増えません?
歯磨き粉落とすとか。
改札で変なとこタッチするとか。
文字読み返しても頭入ってこないとか。
人生そのものが壊れるわけじゃない。
でも、“集中力”だけ静かに死ぬ。
この曲、その感覚がすごい。
「汚して 拭きとって」のループ
コーヒーカップが口を逸れて
汚して 拭きとって
汚して 拭きとって
ここ、めちゃくちゃ好きです。
そしてめちゃくちゃ苦しい。
これ、ただコーヒーこぼした話じゃないんですよね。
たぶん“感情”の話。
忘れようとして、
拭き取って、
でもまた溢れる。
その繰り返し。
しかも、“汚して”の主体が曖昧なのもいい。
コーヒーなのか。
思い出なのか。
自分自身なのか。
全部混ざってる。
あと、この「拭きとって」が優しいんですよね。
叩き壊さない。
叫ばない。
ただ静かに拭く。
大人の失恋って、こういう方向に行くんだなと思います。
若い頃みたいにドラマチックじゃない。
生活の中で、静かに滲む。
あぁ、この曲、かなり夜中寄りの感情だ…。
「眠れてる?」じゃない。「私なしで」が本音
教えて欲しい
Are you sleeping well?
答えて欲しい
Are you sleeping well
without me?
ここ、本当に上手い。
最初は“相手を気遣う言葉”に見えるんです。
「ちゃんと眠れてる?」
優しい。
でも最後の、
「without me?」
で全部ひっくり返る。
あぁ、この人、本当に知りたいのはそこなんだって。
“自分がいなくても平気なのか”
これ、失恋した人間のめちゃくちゃリアルな感情ですよね。
相手の幸せを願いたい。
でも同時に、「ちょっとは困っててほしい」もある。
ちゃんと眠れてないでいてほしい。
少しは自分を思い出しててほしい。
ううっ、人間くさい…。
でも、その醜さを責めてないのがこの曲の優しさなんですよね。
「は」が「も」に変わるだけで、時間が見える
「新しい日々は 君が恋しくて」
「新しい日々も 君が恋しくて」
ここ、本当にすごい。
“は”が“も”になるだけ。
たった一文字。
なのに、時間経過が全部伝わる。
最初は、「新しい日々“は”」だった。
つまり、“その時だけ”の感情。
でも次は、
「新しい日々“も”」
になる。
今日も。
明日も。
結局ずっと。
恋しさが継続してる。
この変化、説明されたわけじゃないのに、感情だけ一気に深くなるんですよね。
ミスチルって、こういう“一文字の傷”が異常に上手い。
この曲、「余白」でできてる
たぶんこの曲が残る理由って、“描かなすぎる”からなんです。
何があったのか詳しく言わない。
別れた理由も言わない。
相手が今どうしてるかもわからない。
だから逆に、聴いた人それぞれの「あの人」が入り込む。
昔好きだった人。
終わった恋。
もう会わない誰か。
この曲、“余白”が主役なんですよね。
しかも、その余白が静か。
「わかってほしい!」って叫ばない。
ただ、小さい生活音だけが鳴ってる。
ピアノ。
コーヒー。
明け方。
その静けさが逆に痛い。
さいごに
『Are you sleeping well without me?』って、“未練の歌”なんですけど、すごく品があるんです。
感情を爆発させない。
むしろ、抑えてる。
でも、人って本当に苦しい時ほど、静かになることありますよね。
泣き叫ぶより、
コーヒーこぼしてる方がリアルだったりする。
この曲は、そういう“大人の痛み方”を描いてる気がします。
そして最後まで、答えは返ってこない。
眠れてるのか。
私なしで平気なのか。
わからない。
でも、たぶん“わからないまま生きていく”のが失恋なんでしょうね。
いやぁ…短いのに、後味がずっと消えない曲です。