Mr.Children歌詞解釈記

ミスチルファン歴30年。

【「せ」から「さ」への覚悟】ミスチル「記憶の旅人」歌詞解釈

最初は「映画のための書き下ろしバラードかな」くらいに思っていました。

でも歌詞を何度も追ううちに、ある一文字が目に止まって、そこで思考が止まりました。

 

僕はここにいるよ
君のいた場所に

「僕はここにいる」は現在形。「君のいた場所」は過去形。

この一行だけで、全部わかる。

君はもういない。

でも僕は、君がいたその場所から動けずにいる。

心の時計が、あの日から止まったまま。

柔らかな後悔が
今日も僕に寄り添ってる

後悔って、普通は鋭いものです。

胸を刺すような痛み。

でも桜井さんは「柔らかな後悔」と言う。時間が経って、痛みの角が取れた。

もう僕を責める敵じゃなくて、そっと隣にいる古い友人みたいな存在になっている。

この表現、ずっと忘れられないでいます。

 

そしてこの曲の核心は、ラストのたった一文字の変化にあります。

前半——「ずっと手放せずに 抱きしめ続けて」

ラスト——「ずっと手放さずに 抱きしめて生きよう」

「せ」が「さ」に変わっている。

手放せずに、は受動です。手放したいのにできない。記憶に縛られている状態。

手放さずに、は能動です。手放せるけど、あえて手放さない。自分の意志で選んでいる。

前半の主人公は、過去に囚われていた。でも最後、彼は決める。

忘れなくていい、この記憶を持ったまま生きていくんだ、と。

縛られているんじゃない。自分で選んだんだ。

 

この曲は「前を向きなさい」と一言も言っていません。

忘れられないなら、それでいい。

手放せずにいた記憶を、これからは手放さずに抱きしめて生きていく。

その一文字に、主人公の再生が全部込められていました。