
この曲の歌詞、やたら人気なんですよね。
たとえばMステのランキング企画。
「ミスチルBest歌詞ランキング」みたいなものをやると、「HANABI」や「終わりなき旅」みたいな大看板に混ざって、しれっと上位に入ってくる。
でも、それも分かるんです。
この曲は、派手な人生を歌っていない。
「夢を追え!」とか、
「限界を超えろ!」とか、そういうことも言わない。
ただ、毎日働いている人間の解像度が、異常に高いんです。
コーヒーを相棒にして
ただ目の前に並べられた
仕事を手際よくこなしてく
コーヒーを相棒にして
この曲の冒頭で出てくる「相棒」が、人間じゃないんですよね。
コーヒー。
会話もしない。
励ましてもくれない。
でも、裏切りもしない。
それくらいの距離感が、ちょうどいい日もあります。
誰にも褒められないプライド
いいさ 誰が褒めるでもないけど
小さなプライドをこの胸に
勲章みたいに付けて
ここ、めちゃくちゃ分かります。
別に表彰されるわけじゃない。
社長から「君の丁寧な議事録が世界を救った」と言われるわけでもない。
でも、自分では分かっている。
今日のあの仕事、ちゃんとやったな。
誰も気づいてないけど、あそこ少しだけ丁寧に直したな。
あのメール、ちょっと言い方を柔らかくしたな。
そういう小さなプライドって、本物の勲章じゃないけど、本人にはちゃんと重さがあるんですよね。
回り回って、誰かの笑い声になる
僕のした単純作業が この世界を回り回って
まだ出会ったこともない人の笑い声を作ってゆく
この曲のいちばんすごいところは、自分の単純作業が、どこかで誰かの笑い声につながっていく、という感覚です。
正直、これって半分くらいは信じきれないじゃないですか。
実感ないし、確かめようもない。
たとえば工場でネジを締めながら、
「このネジがいつか誰かを支えるんだよ」
と言われても、昼休みにはもう忘れてる。
人間、そんなに高尚ではいられない。
でもこの曲は、そこを無理やり美談にしないんですよね。
そこが共感の正体かと。
高尚な人種になった気がして、また庶民に戻る
今 社会とか世界のどこかで起きる大きな出来事を
取り上げて議論して
少し自分が高尚な人種になれた気がして
夜が明けて また小さな庶民
ここ、あるあるすぎます。
夜にニュースを見て、社会とか世界のことを語りたくなる瞬間。
選挙の夜だけ、急に政治に詳しくなる。
そして
経済ニュースを見ながら「これは構造的な問題だよね」とか言い出す(笑)
ちょっとだけ、自分が意識高めな人間になった気がする。
でも翌朝には、いつもの通勤電車です。
そして思うんです。
「ああ、俺は小さな庶民だな」と。
でも、この曲はそこも笑ってくれるんですよね。
バカにするんじゃなくて、分かるよ、という感じで。
爆笑問題の太田さんが、桜井さんとの対談で「この歌詞、俺のこと?」と話していたのがむっちゃ印象的でした。
でも、たぶん僕ら全員のことなんですよね。
ただいま、おかえり
そして、この曲の中でとても大事なのが、
「ただいま」
「おかえり」
という、あの二言です。
ぽつんと置かれているんですよね。
ものすごく短い。
説明もない。
でも、この曲全体がそこへ向かっていたように感じる。
結局、仕事の意味なんて、この二言のためにあるのかもしれません。
目の前の人の笑い顔へ
なんてことのない作業が 回り回り回り回って
今 僕の目の前の人の笑い顔を作ってゆく
ここで面白いのが、「回り回って」では終わらないところです。
さらに重ねて、「回り回り回り回って」となる。
2回なら、ただの言葉遊びかもしれない。
でも4回繰り返されると、本当に社会の大きな渦みたいに聞こえてくる。
仕事、誰か、商品、サービス、生活、笑顔。
「ぐるぐる」とは言わずに“ぐるぐる”を聴かせる。
このリズムの設計、かなり職人芸だと思います。
さいごに
この曲、色の名前がたくさん出てきます。
赤、黄色、緑。
金、銀、紫。
水色、オレンジ。
そして最後に、温かなピンク。
信号機みたいな原色から始まって、
お金や名誉みたいな色を通って、
最後は頬を染めるようなピンクに落ち着く。
これって、人の一生みたいだなと思いました。
……考えすぎですかね。
でも「彩り」って、そういうふうに聴きたくなる曲なんです。
何の意味もないように見える一日。
誰にも褒められない仕事。
ただ片づけただけの作業。
それでも、回り回って、誰かの笑い顔につながっているかもしれない。
そのくらいの希望で、僕らは案外やっていける。
いやぁ、名曲です。
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