Mr.Children歌詞解釈記

ミスチルファン歴30年。

【何の意味もない一日を肯定する歌】ミスチル「彩り」歌詞解釈

この曲の歌詞、やたら人気なんですよね。

たとえばMステのランキング企画。

「ミスチルBest歌詞ランキング」みたいなものをやると、「HANABI」や「終わりなき旅」みたいな大看板に混ざって、しれっと上位に入ってくる。

でも、それも分かるんです。

この曲は、派手な人生を歌っていない。

「夢を追え!」とか、
「限界を超えろ!」とか、そういうことも言わない。

ただ、毎日働いている人間の解像度が、異常に高いんです。

コーヒーを相棒にして

ただ目の前に並べられた
仕事を手際よくこなしてく
コーヒーを相棒にして

この曲の冒頭で出てくる「相棒」が、人間じゃないんですよね。

コーヒー。

会話もしない。
励ましてもくれない。

でも、裏切りもしない。

それくらいの距離感が、ちょうどいい日もあります。

誰にも褒められないプライド

いいさ 誰が褒めるでもないけど
小さなプライドをこの胸に
勲章みたいに付けて

ここ、めちゃくちゃ分かります。

別に表彰されるわけじゃない。

社長から「君の丁寧な議事録が世界を救った」と言われるわけでもない。

でも、自分では分かっている。

今日のあの仕事、ちゃんとやったな。

誰も気づいてないけど、あそこ少しだけ丁寧に直したな。

あのメール、ちょっと言い方を柔らかくしたな。

そういう小さなプライドって、本物の勲章じゃないけど、本人にはちゃんと重さがあるんですよね。

回り回って、誰かの笑い声になる

僕のした単純作業が この世界を回り回って
まだ出会ったこともない人の笑い声を作ってゆく

この曲のいちばんすごいところは、自分の単純作業が、どこかで誰かの笑い声につながっていく、という感覚です。

正直、これって半分くらいは信じきれないじゃないですか。

実感ないし、確かめようもない。

たとえば工場でネジを締めながら、
「このネジがいつか誰かを支えるんだよ」
と言われても、昼休みにはもう忘れてる。

人間、そんなに高尚ではいられない。

でもこの曲は、そこを無理やり美談にしないんですよね。

そこが共感の正体かと。

高尚な人種になった気がして、また庶民に戻る

今 社会とか世界のどこかで起きる大きな出来事を
取り上げて議論して
少し自分が高尚な人種になれた気がして
夜が明けて また小さな庶民

ここ、あるあるすぎます。

夜にニュースを見て、社会とか世界のことを語りたくなる瞬間。

選挙の夜だけ、急に政治に詳しくなる。

そして

経済ニュースを見ながら「これは構造的な問題だよね」とか言い出す(笑)

ちょっとだけ、自分が意識高めな人間になった気がする。

でも翌朝には、いつもの通勤電車です。

そして思うんです。

「ああ、俺は小さな庶民だな」と。

でも、この曲はそこも笑ってくれるんですよね。

バカにするんじゃなくて、分かるよ、という感じで。

爆笑問題の太田さんが、桜井さんとの対談で「この歌詞、俺のこと?」と話していたのがむっちゃ印象的でした。

でも、たぶん僕ら全員のことなんですよね。

ただいま、おかえり

そして、この曲の中でとても大事なのが、
「ただいま」
「おかえり」
という、あの二言です。

ぽつんと置かれているんですよね。

ものすごく短い。

説明もない。

でも、この曲全体がそこへ向かっていたように感じる。

結局、仕事の意味なんて、この二言のためにあるのかもしれません。

目の前の人の笑い顔へ

なんてことのない作業が 回り回り回り回って
今 僕の目の前の人の笑い顔を作ってゆく

ここで面白いのが、「回り回って」では終わらないところです。

さらに重ねて、「回り回り回り回って」となる。

2回なら、ただの言葉遊びかもしれない。

でも4回繰り返されると、本当に社会の大きな渦みたいに聞こえてくる。

仕事、誰か、商品、サービス、生活、笑顔。

「ぐるぐる」とは言わずに“ぐるぐる”を聴かせる。

このリズムの設計、かなり職人芸だと思います。

さいごに

この曲、色の名前がたくさん出てきます。

赤、黄色、緑。
金、銀、紫。
水色、オレンジ。
そして最後に、温かなピンク。

信号機みたいな原色から始まって、
お金や名誉みたいな色を通って、
最後は頬を染めるようなピンクに落ち着く。

これって、人の一生みたいだなと思いました。

……考えすぎですかね。

でも「彩り」って、そういうふうに聴きたくなる曲なんです。

何の意味もないように見える一日。
誰にも褒められない仕事。
ただ片づけただけの作業。

それでも、回り回って、誰かの笑い顔につながっているかもしれない。

そのくらいの希望で、僕らは案外やっていける。

いやぁ、名曲です。


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