恋が終わる時って、案外「怒鳴り合い」でも「涙の別れ」でもない気がします。
ふとした沈黙。
目をそらした仕草。
そういう"静かな違和感"から、終わりは始まる。
「渇いたKISS」は、まさにそんな"終わりの予感"を描いた楽曲です。
「生温い空気」が連れてくるもの
生温い空気がベッドに沈黙を連れてくる
冒頭、桜井さんは、別れを“空気の質感”で描いてきます。
冷たくもないし、熱くもない。
ただ、ぬるい。重い。
言葉にしなくても分かってしまう、「あ、これもう終わるな」っていう空気。
別れって、ドラマみたいに派手に来ないんですよね。
むしろこういう、どうしようもなく中途半端な温度で、気づいたら隣に座ってる。
桜井さん、そこ描くのうますぎるだろ…
って最初ここで止まりました。
「よくあるフォーマット」に乗ってしまう感じ
よくあるフォーマットの上
片一方の踵で乗り上げてしまうんだ
これ、かなり残酷な言い方だなと思ってて。
付き合って、慣れて、ちょっと飽きて
すれ違って、そのまま終わる。
どこにでもある流れ。自分たちだけは違うと思ってたのに、結局そこに収まってしまう。
この瞬間って、悲しいというより、虚しいんですよね。
「ああ、特別じゃなかったんだな」って。
ここ、地味に一番きついところかもしれない。
禁断の実とは
誰かが禁断の実摘み取り 再び次の果実が実る
ここで描かれるのは”裏切りの連鎖”。
"誰か"は、彼女の浮気相手なんでしょう。
でも皮肉なのは、その出来事が主人公の心にも新たな欲望を芽生えさせること。
裏切りがまた新たな裏切りを呼ぶ。
一度ひび割れた信頼は、もう完全には戻らない。
記憶って、あとから効いてくる
くたびれたスニーカーとか、
線香花火とか、
日に焼けたショーツの跡とか。
並んでるの、全部たいしたことない思い出なんですよね。
そのときは。
でも別れたあと、こういう日常の延長だけ、やけに鮮明に残る。
で、夜中に急に思い出して、ちょっとだけ息が詰まる。
当時は何も思ってなかった仕草が、あとから効いてくる。
ほんと、ずるい。
記憶って消えないというより、タイミングを遅らせて刺してくる感じがするんです。
何もなかった顔をして生きるしかない
とりあえず僕はいつも通り
駆け足で地下鉄に乗り込む
ここ、めちゃくちゃ現実ですよね。
世界は普通に動いてるし、会社もあるし、電車も来る。
自分だけ止まってるわけにいかない。
だから、何もなかった顔をするしかない。
でも内側では普通に痛い。
むしろ静かな分、長引く。
しかもそれを、どこか冷静に見てる自分までいる。
この俯瞰してしまう感じ、大人になればなるほど分かる気がします。
ちょっと嫌なんですけどね、あれ。
「行かないで」と言えないまま終わる
Oh Baby Don't go
「行かないで!」一応、引き止めてはいる。
でももう遅いのも分かってる。
ここ、本気の叫びじゃないんですよね。むしろ確認に近い。
「ああ、やっぱり行くんだな」っていう。
桃色のケロイド、という終わり方
生乾きだった胸の瘡蓋がはがれ
桃色のケロイドに変わればいい
ここがこの曲の白眉。
忘れてほしくない。
でも幸せは願ってる。
でもやっぱり、自分の痕跡は残したい。
綺麗でもないし、醜すぎもしない。
その中間。
めちゃくちゃ人間っぽい感情だなって思います。
この部分、初めて聞いた時は「桜井さん、どこまで深いことを考えているんですか?」と思わず歌詞カードに向かって話しかけたくなりましたよ。
おわりに
この曲って、たぶん大失恋の歌というより、静かに終わった恋の後遺症みたいな曲なんだと思うんです。
泣きもしないし、叫びもしない。
でも、ずっと残る。
乾いてるのに、なぜか痛い。
たぶんそれが、「乾いたKISS」なんでしょうね。
